かぼちゃねこ日記

アメリカから見えるもの。考えたこと。

アメリカで大統領選の日々を過ごす

今日、アメリカに住んでいる身として、書き留めておこうと思う。

私は早くこの大統領選が終わって「やっぱりクリントンが勝ったね、あーほっとした。」と言いたいと思っていた。
テレビをつければトランプが映っていたし、疲れていた。
視聴率を取るために盛り上げてるだけで、結局は圧倒的な差だったね、狂乱は終わったね、と早く言いたかった。

大統領選は町中盛り上がってお祭りのようになると聞いていたけれど、全くしーんといて、静かだった。
候補を応援する看板が家の庭に刺さっているのをあまり見かけなかったし、車に貼るステッカーもそんなに見かけなかった。
しかし圧倒的に民主党が強い地域だから盛り上がりようがないのかな、と思っていた。
時々トランプ候補のステッカーや、「ヒラリーは嘘つき」「銃は人を殺さない」「ヒラリーは刑務所へ行け」等の過激なステッカーを貼った車を見かけるのが不安だったけど、それも11月8日までの辛抱だと思っていた。

10月31日ハロウィンの夜、トリックオアトリートに行った家は、去年は家の人がトランプの仮装をしてて、爆笑したのだが、今年は仮装をしていなかった。
笑い飛ばせない、まじな選挙になっている雰囲気を感じた。

11月3日
チューターが「どちらにも入れたくない選挙だ。」と言ったのが気にかかった。
チューターは40~50代の白人女性で、アメリカにきた英語学習者にボランティアで英語を教えている人だ。
その人がどちらにも入れたくない、どちらにするか迷っているようなそぶりを見せたのに違和感を感じた。

11月8日選挙当日。
前日までヒラリーが勝つとどこのメディアでも言われていた。
ふとテレビをつけると信じられない結果が出始めていた。
それでも住民の少ない郊外から結果が出始めるので最初は共和党が有利になるのだ、いつものことだというツイートがあったので信じて見守ることにする。
しかし全然青い棒グラフが伸びない。どんどん赤が伸びてくる。
「トランプが大統領になったら日本に帰る」と言っている私のそばで、子供は「お母さんは大丈夫って言ってたけどさ、トランプのほうがよくテレビで見るし、やばいと思ってたんだよね。」と言い始める。
帰ってきた夫の第一声も「日本に帰るか!」だった。
だんだん冗談にできず本当にトランプが勝ちそうになったので11時頃就寝した。
明日の朝には「やばいかと思ったけど大丈夫だったね」と言えますように、という願いと、もう無理かもしれないという諦めが半々だった。

11月9日
朝目が覚めてツイッターを確認する。
事態は飲み込めた。
やっぱり、、そうなったんだ、という諦めと絶望。
そんな時でも朝ごはんと弁当は作らねばならぬ。
むしろ何かするべきことがあることは幸せなのかもしれない。気がまぎれる。

「次のアメリカ大統領は女性だよ」と子供に言っていた。
オバマ大統領の時に渡米して、女性初の大統領のもとでアメリカの学校に通えるこの子はラッキーだな、世界が大きく動く時にアメリカにいられて、と無邪気に思っていた。
世界は大きく動いた。予期しない方向に。

気が進まなかったが、チューターの授業に向かった。
そこで衝撃的なことを聞いた。
チューターはトランプに投票をしたと言った。
民主党が圧倒的に強いこの地域で、頭脳明晰な女性がそんな判断をするとは思わなかった。
手が一瞬にして冷たくなった。
彼女の娘はとても怒って、朝から口をきいてくれないと言っていた。
私が娘でもそうするだろうなと思った。

彼女の言い分は下記のとおり。
「ヒラリーのメール問題は、大統領にふさわしい危機管理能力が足りていない。
トランプは減税してスモールビジネスを支援するだろう。
トランプは女性蔑視だがビルクリントンも同じようなことをやっている。
シリアからの難民はドイツやギリシャの友人から困っているという話を聞いている。トランプはシリアの周辺で難民がとどまれるよう対策を出している。
私の母が医療従事者だが、オバマケアは医療従事者には不評。国の負担が大きすぎる。」

また、こうも話していた。
「近所はリベラルな人が多くて、トランプに入れるなんてとても言える雰囲気じゃなかった。トランプ支持の息子にも、外では言わないように釘をさしていた。」

私が「おとといまではメディアはヒラリー勝利と報道していたけど、そうはならなかった。それはなんでだと思う?」と聞いたところ、
「トランプに入れると言ったらバカにされるから言えなかったけど、投票は秘密を守れる場所。それでトランプに入れた人も多いと思う。」とのことだった。
彼女は無党派層だ。選挙のたびに候補者の言い分を聞いてその都度投票先を変えると言っていた。
そういう人にヒラリーが不信感を抱かれて、トランプのほうがましだと思われることが信じられなかったけど、これが現実だ。

マクドナルドに飛び込んでクオーターパウンダーとポテトを食べた。やけ食いだ。そうでもしないとやってられない。

夕方、子供がプレイデートに行っている先のアメリカ人のお母さんからメールが来る。
「彼女は素敵な娘さんね。sweetで娘のいいお友達だわ。」
全然そんな意図はないかもしれないけど、マイノリティの私たちでもアメリカに住んでて大丈夫だよ、と言われたみたいで泣きそうになる。
かなり弱っている。

明日もまたマクドナルドに行ってしまうかもしれない。
でも私たちはここでまだ生きていかねばならぬのだ。