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かぼちゃねこ日記

アメリカから見えるもの。考えたこと。

迷い込んだお茶会

広島に行った。
広島の見どころとして縮景園という日本庭園でお抹茶と和菓子もいただけると知って、ずーっと日本に飢えていた私は、日本庭園!お抹茶!和菓子!と勢いこんで縮景園へ向かった。
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入り口で入園料を払うと、お茶屋の100円引券がもらえたので、ますますお抹茶が飲みたくなって、「こちらでお茶会やってます。」と呼び込む着物姿の人がいる建物の中へ向かった。
建物には裏千家と書かれた布がかかっており、受付では上品な着物をまとった女性が微笑んでいた。
「この100円引券って使えます?」と聞いた時に「これはこちらではないんですよ。」と言われた時にあれ、おかしい、と気づくべきだったのだ、たぶん。けれど、そうなのかー、と思っただけで部屋の中へ入った5分後、なにがおかしい、と思った。
まずその待合室になっている部屋に次々に入ってくる人が正座して手をつき深々と頭を下げ「先生、このたびは…」と言って着物姿のおばあさんやおじさんにご挨拶する。そして皆、茶道セットである懐紙、扇子等を持ってきている。
あ、これは何か違うところに来た、と思った私は受付へ帰り、「すいません、今日懐紙も何も用意してきてないんですけど。」と言うと、おっとりと「大丈夫ですよ、持ってきていない方にはこちらで用意しますので。」と言われる。
はあ、そうなのか。じゃあいいか、と思ってまた部屋に戻ると、「あらあら若い人が来てくれて嬉しいわ、こちらへいらっしゃい、火鉢なんて珍しいでしょう、どうぞ見て。」とおばさまに言われ、どんどん上座に行ってしまう。あ、やばい…と思いつつ、優しくしてくれるそのおばさまに「あの、私今日観光でここに来てお抹茶飲みたいなと思っただけなんですけど、大丈夫ですか…?」と聞くと「あらー、そういうのが一番嬉しいのよー。」とのこと。ああそりゃよかった、と思うものの、「先生、このたびは…」と言いながら人はどんどん増えていく。
先生と呼ばれる人は掛け軸について説明する。これは完全に建物前の布に書いてあった裏千家のお茶会にど素人が紛れ込んでしまったことを悟った私は、またおばさまに「あの、これは裏千家の集まりでしたか??」と聞くと、「今日は青年部が…」と説明していただく。青年部、ってことは裏千家広島支部の青年部みたいな所主催のお茶会なのかな、ますます本格的でやばいな、と焦りつつ、おばさまは「私の隣にいらっしゃい、大丈夫よ、どこから来たの?あらー、遠い所からわざわざ。私も若いころアメリカにいたの。あら、高校の時に裏千家を?そしたら大丈夫。初めての人とは全然違うもの。私なんかお稽古さぼってばかりでねぇ。」などとますます優しくしてくれる。さらに次々来る人達に「今日ははるばるアメリカから若い人が参加してくださいました。」と紹介してくれる。その人々は完全に私をそのおばさまの親戚か何かだと思って、手をついて腰を折って挨拶してくれる。もう逃げだせない。高校の時に和菓子が食べたいという目的だけで茶道部に入っていたので、なんとか「挨拶する時は手をつき、頭ではなく腰から折る、頭を下げるのは最後。姿勢良く。」というのだけ思い出してその通りにヘコヘコおじぎしまくる。
とうとう茶室へ通されると、とても上品なお香の香り。そして釜からは蒸気が出ていて、なんとも言えない素晴らしい雰囲気。これがお茶会か…!
おばさまは「私と一緒に行きましょう。」と言ってどんどん先に進む。すると、「先生の奥様は先生の横にいらして。どうぞどうぞ。」とみんなに言われている。「いえいえ私なんか…」と遠慮しながらおばさまは上座から二番目へ。おばさま、そんな立場の方だったのね…!お稽古休んでばかりとかあまりに謙遜されるので、裏千家の一般の会員の方なのだろうと思いこんでいた。「私の横にいらっしゃい。」と言われるものの、そんな上座には行けない。そこに座ってしまったら、器について感想とか述べなきゃいけないのだ、たしか。そんなこと絶対にできないし、うわー、どうしよー!!と思ってるうちに結局上座から五番目に座ってしまう。やばい、冷や汗がドバドバでてくる。
お菓子が出てくる。お菓子を運んできてくれた方に手をついてご挨拶。おばさまが私に懐紙を渡してくれる。わー、懐紙ってどうやって置くんだっけ?広げちゃだめなんだよな、二つに折って輪っかの部分を手前にするんだっけ?反対だっけ?畳に置いていいんだっけ?膝の上だっけ?頭をフル回転させて20年前の記憶を引っ張り出すけどぼんやりとした情報しか出てこない。さらに隣に座る大先生と呼ばれるおばあさまに黒文字も貸してもらう。
お菓子を取る時って隣の人との間に置いて「お先に失礼します」とか手をついて挨拶してから取るんだっけ?あれ、それはお抹茶の時だっけ?取る時懐紙はどこに置くんだっけ?畳?隣の大先生を見るも、大先生は脚が悪いらしく椅子に座っているのでそういった動作はない。とりあえず懐紙を自分の膝の前の畳に置いて、えいや、と取る。隣の人にお菓子の入っていた器を渡す。
私より上座の四人はお菓子の入っていた器について、「これは◯◯ですね。」と語っている。そういえば。とはたと気づく。私は茶道の練習はしてたけれど、お茶会に参加したことはない。これが初お茶会。いきなり20年の時を経て本番。
お菓子についても「これは◯◯だわ、めでたいねぇ。◯◯さんのとこのかしら。」などという話をニコニコしながら必死に聞きつつ、無言で食べる。あんまり小さくしないで数口で食べるんだっけ?ゆっくり食べてるとお抹茶がでてくるから結構さっさと食べなきゃいけないんだよな、とかすかな記憶を頼りに食べる。
お抹茶が上座から順番に出てくる。三番目の人までのお茶碗はその日の主役のお茶碗であるらしく、それぞれ紹介がされる。よかった、おばさまの隣に行かなくて。大先生と言われる人を差し置いて私がそのお茶碗を使うことになるところだった。ぱっと一目見て上座の人達が「これはむびょうだね。これはおさるさん、来年の干支だからだね。」等と感想を述べられる。さらにお茶碗を作った人の名前等の説明があり、一番上座の先生は「それはどこ(出身)の人?」等と厳しい質問をさらりと言う。説明している青年部の方は慌てながらも説明を重ねる。ああこうやって若手を育てていくのか、と思いつつ、とにかく私より上座の四人はこの会で相当偉い方のようでさらにびびりまくる。
引き続き掛け軸や床の間に飾られた置物、茶釜等の説明を聞く。
さっき上座の方々が「むびょう」と言っていたお茶碗は6つのひょうたんが描かれているため、「むびょう」→「無病息災」という意味があること等を説明を聞いて知る。私は20年前、本当に茶道のさわりのところに触れただけだったんだな、と気づく。これは思った以上にすごーく深い道なんだな。
私のところにもお抹茶が来た。お茶碗少し回して正面外してから飲むんだっけ?あれ、飲む前に「お点前ちょうだいいたします」とかいうんじゃなかったか?誰に言うの?お抹茶持ってきた人だっけ?ああさっき無言でおじぎして、もう行っちゃったよ!とかぐるぐる思ってると「大丈夫よ、どこから飲んでも平気よ。」とまたおばさまに声をかけられる。三回くらい回すような気が…と思いつつ、適当にお茶碗を回して飲む。
お抹茶は本当に美味しかった。こんな冷や汗だらだらかいてる状態じゃ、味なんてしないかと思いきや、上手な人がいれるとこんなに美味しいんだな、と思う。全く苦味を感じない。私が家で自己流で適当にシャコシャコ茶せんを回してたてたお抹茶とは全然違う。
お茶碗は鶴が飛んでいる縁起の良さそうなもの。
下を向いて飲まない、上を向いて数回で飲みほす。という茶道部の先生の指導を少しだけ思い出す。
飲み終わったら口をつけていたところを指でぬぐいお懐紙で指をふくんだっけ?この使ったお懐紙、本来は茶道セットの中にしまうんだったような。着物のたもともないし隠せないな、どうしよう?お茶碗は正面を反対側に向けて置くんだっけ?あれ、その前にお茶碗拝見?置く場所は畳のへりのとこはだめだったんだっけ?ああへりに置いちゃった!マナー違反だ。
お茶碗を片付けてもらい、「結構なお点前でした。」ってどっかで言うんじゃなかったか?無言でまたおじぎしてしまった…。と焦りつつ、初めてのお茶会は終わった。
完全に私が間違えてお茶会に紛れ込んだのに、最後まで本当に親切にしていただいたおばさまの姿に「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」とはまさにこのことか…!と実感した。
2リットルくらい冷や汗をかいたけど、貴重な体験をさせていただいた。海外にも裏千家の支部があると思いますよ、とのことだったので、また基本から習うのもいいかもしれない。お邪魔しました。